箱入り結婚のススメ
母と一緒に紅茶をリビングに運ぶと、父とワシントンの話をしていた秀明さんは、丁寧に頭を下げながらそれを母から受け取った。
私が彼の隣に座ると、秀明さんは少し落ち着かない様子で、ネクタイを締め直している。
珍しい。
玄関では少しも緊張しているようには見えなかったのに、今は少し余裕が見られない。
「あの……」
秀明さんは、ソファから降りて床に正座した。
「今日は、舞さんとの結婚を許していただきたくて参りました」
緊張しているように見える彼だけど、凛とした顔で父を見つめている。
「それで、スーツなわけか」
「はい。
舞さんとは最初から結婚を視野に入れてのお付き合いをさせていただいておりました。
それが今回長期出張して、彼女がどれだけ私にとって大きな存在なのか、思い知りました。
一生共にするのは、舞さんしかないと、改めて感じました」
ゆっくり、けれどはっきりとそう口にした秀明さんは、大きく息を吸い込んだ。