箱入り結婚のススメ

久しぶりに彼に手を握られると、心が穏やかになっていく。
本当に幸せなひとときだった。


私を家まで送り届けてくれた秀明さんは、車を降りようとする私を止める。


「舞」

「はい」

「すごく楽しかったよ」

「私もです」


こうやって言葉で伝えあうと、気持ちがより明らかになり、互いの理解が深まる気がする。



『舞には全部言わないと伝わらないから』なんて、彼は笑って言うけれど、これって大切なことなのかもしれない。


「明日も、来るよ」

「明日?」

「仕事で遅くなるかもしれないけど、失礼でないような時間に」


もしかして、父に会おうとしているの?


「でも……」


彼の仕事の忙しさは知っている。
だから、無理してほしくない。


< 312 / 450 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop