箱入り結婚のススメ
「言っただろう?
舞の他にはなにもいらない。
舞との将来を考えたら、こんなことなんでもないよ」
にっこり笑った秀明さんに、私は飛びついた。
私、絶対にこの人と一緒になる。絶対に。
次の日、幼稚園から帰ってくると、ひたすらに秀明さんを待った。
時計の針が二十時半を指す頃、玄関のチャイムが鳴る。
慌てて玄関に走ると、やっぱり秀明さんだった。
「ごめん、遅くなった」
「ううん」
彼はいつももっと帰りが遅い。
きっと急いで仕事を終わらせたのだと思う。
「お父さん、お帰りになってる?」
「はい……」
「まぁ、室賀さん」
母が玄関に顔を出して、秀明さんを見つける。
そして、母の声が聞こえただろう父は、リビングから「なんの用だ」とぶっきらぼうに言い放った。