箱入り結婚のススメ
「好きな人と生涯を共にする。それは、そんなにいけないことですか?」
父の目が泳ぐ。
母のひと言は、どんな言葉より効いたようだ。
「室賀さんは、舞が私達の子でよかったと、何度も言ってくださったじゃないですか」
私も泣かずにはいられなかった。
秀明さんは、こんなに頑固な父のことだって一度も否定しなかった。
だから、溜息をつきながらも父を嫌いにならずにすんだ。
「舞」
「はい」
突然父が私の名を口にする。
「お前は本当に幸せなのか?」
「はい。秀明さんの隣はとても幸せです。
それに……お父様とお母様に育てていただいて、本当に感謝しています」
窮屈な思いはしたけど、それ以上の幸せがこの家には詰まっている。