箱入り結婚のススメ
「室賀さん、舞をお願いします。舞、きちんとご挨拶するのよ」
「はい」
私の結婚が決まってから、なんだか母が生き生きしている。
父の意見に決して背かず、いつも父の後ろからついていくような感じだったのに、結婚のことについては、母がぐいぐい引っ張っている。
そんな母を見て秀明さんが「お母さん、自分の結婚がすごく幸せだったんだよ」とつぶやいたのを聞いて、大きく頷いた。
母にお土産を持たされた私は、秀明さんの乗ってきたタクシーに乗り込むと、駅へと向かう。
「お父さん、ちょっとご機嫌ナナメだったな」
「うふふ。でも、昨日は母と一緒にお土産を出し入れしてたんですよ。
母がいくつか買い込んできて、どれがいい? なんて父に聞いていたんです。
なんだかんだ言っても、喜んでくれていると思います」
「そっか。それはよかった」