箱入り結婚のススメ

彼の実家のある静岡までは、思っていたより早く着いた。
きっと、途中で見える素晴らしい景色に目を奪われたからだと思う。

太陽の光を反射してきらめく海は、あまりに幻想的で思わず声が出るほどだったし、言わずと知れた富士山は、青い空と美しいコントラストを作っていた。


「はぁ、なんて素敵なところに住んでいたんですか?」

「あはは。でも東京の方が便利だぞ。
やんちゃするには、こっちの方がよかったけどな」


秀明さんのリラックスした笑顔は、私の癒しだ。


駅から再びタクシーに乗り込むと、十五分ほどで彼の実家についた。


「ちょっと、待ってください」


すぐにチャイムを鳴らそうとする秀明さんの手を引っ張ると、彼はクスッと笑う。


「大丈夫だよ。家の両親、舞に会えることをすごく楽しみにしてるんだから」



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