箱入り結婚のススメ
「舞、今年が初担任なんだ。
今年は緊張も続くし、年度替わりの春にでもできたらと思ってる」
「そうか。まだ随分先だな」
それは秀明さんの心遣いだった。
もう結婚することは決まったのだから、式を焦る必要はないと。
私の心にゆとりがないことを、見抜いてのことだ。
「楽しみね。やっと秀明が片付くのね」
甘い香りのする紅茶を持ってきてくれたお母様が、お父様の隣に座って口を挟む。
「片付くって……」
「だってそうじゃない。外国ばかり行っていて、女の人に興味ないのかと心配してたわ」
「ブッ……」
早速、紅茶を口にしていた秀明さんが、思わず吹き出しそうになって口を押える。
こんな秀明さんを見たのは初めてだ。
それに……私の家とは違う、とても明るい雰囲気に、自然と笑みがこぼれる。