箱入り結婚のススメ
「あの……不束者ですが、どうかよろしくお願いします」
私がソファから降りて、正座して頭を下げると、秀明さんも隣に正座した。
「いえいえ。どうか顔を上げて?
こちらこそ、どうぞよろしく」
お父さんに促され、私達は再びソファに座った。
「秀明から聞いてはいたけど、こんなに綺麗なお嬢さんがうちの家族になってくれるなんて、うれしいじゃないか。なぁ、お母さん」
「そうですよ。大歓迎。
だけど、舞さんがご立派な家の方だと聞いて、秀明でいいのかって」
「その話だけど……」
秀明さんが神妙な面持ちで口を開いた。
「やっぱり俺、婿養子に入ろうと思う」
そんな……。
母がいいと言っていたから、その話はなくなったものだとばかり思っていた。
「舞のお母さんが婿養子でなくてもいいと言ってくれたんだけど、やっぱりそうしたい。
ただ、養子縁組してというものではなくて、俺が速水姓を名乗るという形でどうだろう」