箱入り結婚のススメ
婿養子には色々な形があると聞いた。
ひとつは秀明さんが速水の両親と養子縁組をして息子になり、私を嫁に迎えるという形をとるもの。
もうひとつは、ただ速水の名前を名乗るもの。
彼は後者を提案した。
おそらく、これが両家にとって一番いい方法なのだ。
「わかってるよ。秀明が幸せなら、どんな形でも構わないさ」
お父様の言葉に、お母様が小さく頷く。
その様子を見て、秀明さんは本当に愛されて育ってきたのだと感じる。
「すみません。私の家の都合ばかりで……」
「気にしないで。
秀明には兄がいて、結婚して室賀を名乗ってるから。
それに、名前なんて大したことじゃないでしょう?
それより、このマドレーヌ、すごくおいしいわ」
お母様は、パティスリー ド ショコラティエのマドレーヌを口にして、優しく笑う。
「舞さんだって悩まれたんでしょう?
だからもうこの話は終わり。
ただ、舞さんのお宅の家柄に家が合わせられるかどうかだけが心配だわ」
「ホントだな」