箱入り結婚のススメ

そのあと、私の緊張をほぐしてくれたのは、お母様だった。
「お昼ご飯の用意をするから一緒にどう？」と誘ってくれたのだ。


「今日は奮発してお寿司。と言っても、家で握るんだけど」

「家でお寿司を握るなんて、初めてです」


寿司を家で母が握ったという記憶はない。
だけど、とても楽しそうだ。


「お父さんが張り切って、焼津に魚を買いに行ったの。
舞さんのお口に合うかどうかわからないけど、すごく新鮮だから食べてもらおうと思って」

「わざわざですか？　すごくうれしいです」


お母様は慣れた手つきでシャリを握っていく。


「舞さんもやってみる？」

「はい」


とはいえ、握り加減が難しく、少し強く握ると固くなってしまうし、弱すぎるとパラパラとこぼれてしまう。