箱入り結婚のススメ
幼稚園で婚約の報告をすると、先輩の先生達は「今から結婚式までが一番楽しいわよ」と口をそろえた。
その通り、式を想像するとワクワクが止まらない。
私がコーヒーカップをふたつ持って、秀明さんの隣に座ると「サンキュ」と受け取りながら微笑む。
そして、再びパンフレットに視線を落とすと、まだ熱いコーヒーを一口飲んだ。
「舞、デートしよっか」
「デート? どこかに出かけるんですか?」
唐突すぎる提案に首をかしげる。
今日は、週の半ばに出張から帰ってきたばかりの彼と、部屋でゆっくりする予定だったのに。
「うん。ここ」
彼はパンフレットの表紙に載っている、白い教会を指差した。
行動力があるというのは、こういうことをいうのだろう。
郊外にある「ローズパレス」という名の教会までは、車で四十分ほどだった。
小高い丘の上の真っ白な教会は、たくさんの緑に囲まれていて、まるで隠れ家のようだった。