箱入り結婚のススメ
「そう、ですか……」
「すみません」
心なしか肩を落としたように見える室賀さんは、「はーっ」と溜息をついた。
「わかりました。行きましょう。どの路線ですか?」
「こっちです」
私が指を差すと、室賀さんはスマホをしまって再び歩き始める。
「ありがとうございました」
私が深く頭を下げると、「お気をつけて」と返してくれる。
その言葉に再び小さく頭を下げると、室賀さんは「僕はとても楽しかった」とつぶやく。
「はい。私もです」
緊張の連続だったけど、室賀さんと話せてとても楽しかった。
だけど、彼は私を見つめて不思議そうな顔をしている。
「それでは失礼します」
改札をくぐってから振り向くと、彼は小さく手をあげてくれた。