箱入り結婚のススメ
ケガの功名
「ただいま帰りました」
家に帰ると、父と母がリビングでテレビを見ていた。
「おかえりなさい。お風呂入る?」
「はい」
麻子の電話のおかげで、特になにも言われなくてホッとする。
嘘をついたことの罪悪感で、胸がチクッと痛んだけど、それ以上に楽しい時間だった。
「最初はさ、みんなそうやって親の目を盗んでいろいろやらかすものなの。
それがそうねぇ、高校生くらいで経験するのかな。だから舞はちょっと遅れてる」
麻子の言葉を思い出しながら、みんなしているとかいう経験が、意外に楽しいものだと知った。
次の日、少し早めに幼稚園に出勤すると、ちょっと疲れ気味の麻子もやって来た。
「麻子、おはよ」
「おはよ、舞。ちょっと、ちょっと」
麻子は私をまだ誰も登園していない二階の教室に連れていく。
麻子は年長、私は年中の補助教員だ。