箱入り結婚のススメ
「やっぱり……よくお似合いです。溜息が出ます」
試着室のカーテンが開けられると、安永さんが大きな目を見開いている。
ヘアメイクはいつものままだから、なんとなく違和感はあるけど……"ビビッとくる"というのは、こういうことを言うのだと思う。
「私……これにしたいです」
「ありがとうございます。これ、実は一点ものなんです」
「えっ?」
「どうしても速水様に着ていただきたくて、チーフを説得して買い取ってもらいました」
おどけたように笑う安永さんが担当で、本当によかった。
ドレスを決めたことを出張中の秀明さんに電話で伝えると、「写真を送ってくれ」なんていうから、思わず笑みがこぼれる。
「内緒です」
「なんだよ。楽しみにしてたんだぞ」
「本番まで内緒です」
安永さんと話してそう決めた。
サプライズにした方が喜びが大きいかもしれないと、彼女も言うから。