箱入り結婚のススメ

父や母の反対を押し切って、先生になってよかったと、心から思えた瞬間だった。


そして……麻子も最初で最後の担任が終了した。

父兄の計らいもあって、大きな花束を抱えた彼女は、珍しくポロポロ泣き崩れて、言葉すら出てこないような状態だ。

初めて担任した子供達を無事に小学校へ送り出した安堵と、辞めるという寂しさと……色々な感情が入り乱れているのだと思う。


最後に園を出るとき、麻子は私に抱きついてきた。


「舞……」

「うん」

「私、幸せだったよ」

「うん。これからも、幸せだよ?」

「そう、だね」


恥ずかしそうにクスッと笑った麻子は、「ずっと友達だから」と言ってくれた。


その日家に帰ると、母が満面の笑みで私を迎えてくれて不思議に思う。
リビングに入ると、テーブルの上に大きな花束があって驚いた。

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