箱入り結婚のススメ
そして……式の前の最後の日曜日。
秀明さんは私を食事に誘った。
家まで迎えに来てくれたとき、きちんと「少しだけお借りします」と言ってくれたのは、式までのカウントダウンが始まって、私が父と母との時間を大切にしていると知っていたからだ。
リアンに連れて行ってくれるのかとばかり思っていたのに、彼は小高い丘の上にある有名なフレンチレストランに私を連れて行った。
お気に入りのネイビーのワンピースを着てきてよかった。
「オシャレしてきて」と冗談めかして言われたから、一応ワンピースを選んだけれど、こんなところに来るのなら、最初から言っておいてほしい。
そういえば……秀明さんも休日だというのにスーツ姿だ。
「室賀様、お待ちしておりました」
予約をしておいてくれたのだろう。
すぐに大きな窓から街を一望できる席に案内された。
「素敵」
ポツポツとつき始めた街の明かりがあまりに美しくて、思わず声が出る。