箱入り結婚のススメ

「室賀君と一緒に楽しい家庭を築きなさい。
もう帰ってくるなと言いたいところだが、いつでも帰ってきなさい」

「もう、あなた」


母が父の言葉に笑みを漏らす。
過保護な父は、ずっと私の味方だったのだ。


「今日は早く休みなさい」

「はい。ありがとうございます」


心なしか父の目が潤んでいる。
それを隠すためなのか、父は席を立ってリビングを出て行ってしまった。


「舞」

「はい」

「お父様、舞が自分の敷いたレールを飛び出したとき、すごく驚いてね」


幼稚園への就職を決めたときだろうか。


「だけど、きっとそれが誇らしかったの。
それからどんどん自立してしっかりしてきた舞に、私達がついていけなかったわ」


コーヒーカップをテーブルに戻した母は、優しい目をしている。

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