箱入り結婚のススメ
小さなライバル
「ただいま」
「おかえりなさい、秀明さん」
二週間もの長期出張がやっと終わり、久しぶりに我が家に帰ってきた。
舞と結婚してからは、この瞬間がたまらなくうれしい。
エントランスでチャイムを鳴らし舞の声を聞くと、エレベーターに乗って五階に上がる。
そして、玄関のチャイムを再び鳴らす。
もちろん、家の鍵は持っている。
だけと、ドアを開けた時の舞の笑顔が見たいから、自分で開けたりはしない。
「ピンポーン」
ここまではいつも通りだった。
舞が笑顔で迎えてくれるはず、だった。
ガチャッと鍵の開く音がして、心臓が高鳴る。
だけど……。
「ただい……わっ!」
ドアが開くと同時に、なにかが俺の足に突進してきた。