箱入り結婚のススメ
「あの日、なにがなんでも聞き出すべきだったって後悔したよ。
日がたつにつれ、その後悔も大きくなって」
「フー」と恥ずかしそうに溜息をついた室賀さんは、再び口を開く。
「出会ったばかりなのに、こんなに気になる人、初めてだった。
今まで周りにいないタイプだったから、最初はどう話していいのか迷ったけど……舞さんと話していると、素直にならなくちゃいけない気がして」
「そんな……」
私と話すなんて、つまらないかもしれないと思っていたのだから、驚くばかりだ。
「舞さんの目を見ていると、嘘はつけない人だろうなって、なんとなく思ったんだ」
私……今、最大限の褒め言葉をもらっている気がする。
「どうしても、もう一度会いたくて。
でも、井出を通して、若槻さんに断られたんだよ。
舞さんは軽い気持ちで付き合いたいと思ってる人には渡さないって」
「麻子が?」
「うん」と彼はうなずいて、再び車を発進させた。