箱入り結婚のススメ
「よく考えれば、井出と若槻さんに試されていた気もするなぁ。
舞さんがケガをしたって井出に聞いて、どこの病院かって井出に食ってかかったら、”合格”って言われたんだ。
それから若槻さんからメールが来て……」
まさか麻子が、室賀さんを試したの?
だけど、麻子ならやりかねないなんて少し思ったりもして。
でも、”担ぎ込まれた”は余計だったと思う。
「すみません。ご心配をおかけしました」
「うん。ホントに、ビックリしたよ」
室賀さんはやっぱりクスッと笑った。
「こんなこと言うのは不謹慎だけど……」
「不謹慎?」
室賀さんは小さくうなずくと再び口を開く。
「舞さんがケガをしてくれたおかげで、やっと捕まえられた」
「あはは」
彼があまりに深刻な顔をしているから、身構えてしまったというのに、思いがけない言葉に笑みがこぼれる。
「でも、早く治して」
「はい」
合コンの時は緊張しすぎてうまく話せなかったのに、今は違う。
ほんの少し、室賀さんのことが見えてきたからなのかもしれない。