箱入り結婚のススメ
家が見えてくると、少し手前で彼に車を停めてもらった。
「ありがとうございました」
私がお礼を言って車から降りようとすると、室賀さんは「待って」と私を止める。
「舞さん」
「はい」
「忘れてた。これ」
室賀さんはジャケットのポケットから私のハンカチを取り出した。
合コンでビールをこぼした時のものだ。
「このハンカチを返そうにも、肝心の連絡先がわからないという最悪の事態になっちゃって」
彼は苦笑しながら私にハンカチを差し出した。
「いえ、ハンカチなんて気にされなくてもよかったのに」
「いや、気になったのは舞さんの方ね」
私?
「ハンカチを返すのを理由にまた会ってもらおうと目論んでたから」
私がハンカチを受けとると、彼はペロッと舌を出した。