箱入り結婚のススメ
好きな人の迷惑
「おはようございます」
「速水先生、大丈夫ですか?」
朝、父と母に顔を合わせないようにこっそり出勤すると、すぐに小栗先生が駆けつけてきた。
「はい。ご心配をおかけしました」
精一杯の笑顔で返事をしたけど、腕はギプスだ。
小栗先生は心配そうに私を見つめた。
「お手伝いできることはしますから、遠慮なく言ってください」
「ありがとうございます」
園には小栗先生と園バスの運転手さんしか男の人はいないから、力仕事はいつも頼っている。
だけど、手が片方使えない分、また小栗先生にお世話になるかもしれないと思った。
「速水先生!」
次に飛んできたのは園長先生だった。
「本当にごめんなさい。私の責任です」
「いえ、園長先生が責任を感じていただく必要なんてありません」
私の運動神経がもっと良ければ、ケガなんて事態に至らなかったのかもしれないのだし。