箱入り結婚のススメ

「はぁ」

「溜息ついて、なに?」

「なにって……」


バス当番で園児を送り届けて園に戻ると、麻子が丁度通りかかった。
廊下の掃除中だ。


「帰りたくない」

「あはは。その言葉は室賀さんにどーぞ」

「まさか!」

「若槻先生、こっちもお願い」


麻子が別の先生に呼ばれている。


「舞、今日は電話するのよ。なんなら会うっていうのも手ね。それじゃ」


麻子は絶対、面白がっている。

でも……帰ったら父にお見合いの話をまたされそうだし、麻子の言うとおり、室賀さんを頼るしかないのかな……。


私はさくら組の掃除と、子供たちの作品を掲示し終えると、悶々としながら園を出た。

帰り道、何度もスマホを見ながら、溜息をつく。
そんなこと言ったって、やっぱり電話できない。

運の悪いことに、いつも乗るバスは、丁度行ってしまったところだった。


「はぁ……」


溜息をつくと幸せが逃げるなんていうけど、溜息のひとつでもつきたくなるような状況だ。

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