箱入り結婚のススメ
「あの……私……」
「お待たせしました」
そこに丁度料理が運ばれてきて、室賀さんは苦笑した。
「食べましょうか」
彼は私を逃がしてくれたのだと思う。
きっと、返事に困っていると思ったに違いない。
「あの……そっちも食べてみたいです」
「あっ、そうだった。半分ずつだ」
室賀さんの前に置かれたシチューは、大振りのお肉が見るからに軟らかそうで、とても良い匂いがする。
とはいえ、シチューをどうしても食べたかったというわけではない。
彼となにかを分け合うということが、したかったのだ。
「お肉は口の中でとろけるから。舞さん嫌いなものない?」
「はい。ホタテはいかがですか?」
「もちろんいただくよ」
私たちはまるで子供のように料理を分け合った。
父や母の前でこんなことしたら、絶対に叱られるのだけど。
「それじゃ、改めていただきます」
室賀さんは大きな口でシチューを頬張った。