初デート~12年目の恋物語 番外編(1)~
プロローグ
「え!? ハルちゃん、電車乗ったことないの!?」
梨乃ちゃんが驚いたように、わたしを見た。
そして、亜矢ちゃんが、
「そりゃ、ビックリだ」
と、目を点にした。
「陽菜(はるな)んちって、駅から、すぐじゃん?」
しーちゃんが言った。
確かにわたしの家は、駅まで徒歩5分ないくらいで、かなり近い方だと思う。
「あ、でも、新幹線には乗ったことがあるよ」
「新幹線まで、どうやって行くの?」
「車」
梨乃ちゃん、亜矢ちゃんがため息を吐いた。
「けっこう、距離あるのに、車かぁ」
「さすが、お嬢さまは違うねぇ~」
嫌みではなく、感心したように言う2人。
「ハルちゃんちって、車だって、運転手さん付きでしょ」
「あ、うん」
答えると、しーちゃんも一緒に、また、
「お嬢さまだわ、やっぱ」
とか、三人でうんうん頷き合う。
「えっとね、でも、お兄ちゃんは、普通に電車乗るし」
と、反論したけど、後はもう、
「今時、天然記念物みたい」
「ハルちゃん、いつまでも、そのままでいてね」
「今度、運転手付きの車に乗せてね」
とか、梨乃ちゃん、亜矢ちゃんに頭をなで回されて、わたしの言葉は聞いてもらえなかった。
電車に乗ったことがないのは、お嬢さまとかじゃなく、
わたしが生まれつき、心臓が悪くて、
ほとんど出かけないからだと言いたかったけど、
そんなことより、「天然記念物」が気になって。
けっきょく、何も言えなかった。
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