初デート~12年目の恋物語 番外編(1)~
電車から降りようとすると、後ろから来た人に押された。
あっ。
グラリと身体が揺れる。
わたしを押した人は、わたしを押しのけるように、先に降りてしまって。
わたしにはもう、自分の身体を立て直す力なんて、残っていなくて。
倒れる!
そう思ったとき、
「危ない!」
と、声がして、誰かの大きな腕に抱き留められた。
さっき、席を立ってくれた男の人だった。
「ひどいなぁ」
その人は、そう言って、そのまま、わたしの身体を支えて、一緒に電車を降りてくれた。
「大丈夫? ベンチまで行こうか」
「……あの、電車、」
「ああ、別に急いでいるわけじゃないから大丈夫」
「ありがと…ござい、ます」
気持ち悪い。
ふらふらして、まともに歩けない。
けっきょく、その人に支えられて、何とかベンチまで連れて行ってもらった。