初デート~12年目の恋物語 番外編(1)~
気持ち悪い。
貧血と、乗り物酔い。
でも、心臓から来ている何かじゃないから、きっと、しばらく休めば……。
「大丈夫? 駅員さん、呼んでこようか?」
心配そうな声。
親切な人。
「座って、休めば……たぶん、落ち着く、ので」
お礼を言おうと、顔を上げると、背筋にぞくりと悪寒が走って、涙目になってしまった。
だいたい、顔がどこにあるかは分かるけど、相変わらず、視界は霞がかっていてしっかり見えていない。
けっきょく、わたしはすぐにうつむいて、ギュッと目を瞑った。
「貧血かな?」
「……たぶん、…あの、……後は一人、で」
「いや! ぜんぜん大丈夫そうじゃないから」
その人はきっぱりと否定すると、心配そうに続けた。
「駅長室で休ませてもらうならいいけど、そうじゃないなら、置いて行けないよ」
「……でも」
「落ち着くまで、ね。それか、誰か、迎えに来てもらえるかな?」
……誰か?
呼べば、きっと、誰か来てくれる。
でも、嫌だ。
と言うか、恥ずかしくて、そんなこと……できない。
でも、通りすがりの人に、いつまでも迷惑をかけるのも……。