初デート~12年目の恋物語 番外編(1)~

俯いて目をつむり、浅い呼吸をくり返している内に、斜めがけにしたポシェットの中で携帯電話が震えているのに気が付いた。



今は、出られないよ。



そう思って放置していると、数分もおかずに、またかかって来る。



「電話、なってるみたいだけど?」



隣にいる親切な人に言われて、3回目、とうとう携帯を取り出すと通話ボタンを押した。



「……はい。陽菜です」



小さな声で、何とか名乗ると、



「ハル!? どこにいる!?」



と、カナの声が耳に飛び込んできた。



「……カナ? なんで?」



目をつむったまま、のっそり答えるとカナは切羽詰まった声を上げた。



「具合悪いのか!?」



……イヤだなぁ。

付き合いが長いから、声の調子で何でもバレちゃう。



「そんなことないよ」



そう言ってみたけど、カナは聞いていない。



「すぐ行くから、とにかく、どこにいるか教えろよ」



どこって。

……ここ、どこだろう?
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