初デート~12年目の恋物語 番外編(1)~
3.再会
どれくらい経っただろう?
迎えが来るみたいなので、もう大丈夫ですって言ったけど、親切な男の人は、
「じゃあ、その人が来るまで、ね」
と、けっきょく、ずっとわたしに付き合ってくれた。
「ハル!」
俯いて目を閉じていると、聞き慣れた声が耳に飛び込んできた。
「大丈夫か!?」
その声に顔を上げて目を開けると、カナの心配そうな顔が目の前にあった。
まだ、少し霞んでいるけど、カナの顔がちゃんと見えた。
「……もう、大丈夫」
貧血もあったけど、どちらかというと、ただの乗り物酔いだったみたいで、揺れない場所に座って休んでいる間に、大分楽になった。
うっすらとではあったけど、何とか笑みを見せると、カナがホウッとため息を吐いた。
「……よかった」
カナの心底安心した……という感じのつぶやきを聞くと、
本当に悪いことをしたな、と思う。
カナは、わたしの無事を確かめるように、わたしの頭をギュッと抱きしめる。
恥ずかしいから、やめて、って思ったけど、
言えなかった。
それからカナは、隣の人に頭を下げた。
「どうも。お世話をおかけしました」
ようやく見えるようになった、その人は、5つ上のお兄ちゃんと同じくらい、たぶん、大学生くらいの男性だった。
優しそうなその人は、
「いや、ボクは何もしていないから」
と、にっこり笑うと、
「じゃ、お大事に」
と軽く手を上げ、電車待ちの列に向かった。