初デート~12年目の恋物語 番外編(1)~
「なんで一人で行っちゃうんだよ」
ブツクサ言いながら、それでも安心したように、カナはわたしの隣に腰かけた。
「出かけたいなら、オレに言えば良いだろ?」
恨みがましいカナの声。
でも、どうして知ってるの?
言葉にしていないのに、顔に出ていたのか、カナは続けた。
「ハルんち、大騒ぎだったぞ」
「え?」
「オレ、こんなことになってるって思わないから、ハルんち行ったんだよな」
幼なじみだし、隣の家だし、カナは連絡なしで、よく家に遊びに来る。
「そしたら、ハル、いないって言うじゃん?」
「……うん」
先を聞くのが怖くなってきた。
「沙代さん、運転手さんが家にいるって知って、青くなってたぞ」
また、心配をかけてしまった。
って思うけど、でも、少しくらい信用してくれてもいいのに。
「おばさんに電話したら、オレと出かけるように言ったって言うし、だけどオレ、なにも聞いてないし。
行き先が決まってるなら、とにかく追いかけなきゃって思って、飛んできたよ」
「なんで?」
「なんでって……まあ、オレだって過保護だとは思うけどな」
カナは、なだめるように、わたしの頭をなでた。
「だけど現に具合悪くして、途中下車してるだろ? だから心配するんだよ、みんな」
返す言葉がなくて黙っていると、カナは、
「何にしても無事で良かった」
って、もう一度、わたしの頭を抱き寄せた。