初デート~12年目の恋物語 番外編(1)~
「おじいちゃん? 陽菜です。ごめんね、心配かけて」
「いいよいいよ。無事ならそれでいい」
電話の向こうから、おじいちゃんのホッとしたような声が聞こえてきた。
優しく言ってもらうと、なおさら、申し訳なくなる。
「具合、悪くないか? カナくんから見つけたって連絡があった時は、調子が悪そうだって言っていたけど」
「大丈夫よ。乗り物酔いしたみたいで、途中で降りただけだから。もう平気」
「そうか。無理しちゃダメだぞ。車、回そうか?」
「え? まだ用事済んでいないから、また電車に乗るもの」
おじいちゃんは、わたしの言葉を聞いて、一瞬、黙り込んだ。
それから、
「そうか。……じゃあ、カナくんに代わってくれるかな?」
と言った。
何か言われる気がしたのに、と思いながら、カナに電話を手渡す。
おじいちゃんは、基本的にわたしに甘い。
もしかしたら、叱られたことなんて、ないかも知れない。
「じいちゃん? 割と元気だったろ? 安心した?」
カナは努めて明るく話している。
おじいちゃんに心配をかけないようにと、意識してくれているのが分かり、申し訳なくなってしまう。
実際、もう大丈夫。
だけど、親切なあの男の人がいなかったら、きっと、電車から降りた時、倒れていた。
「ああ、大丈夫。
ハルが、そんなに電車に乗りたいなら、オレがちゃんと連れて行くから。
どうしてもの時は車頼むよ。タクシーでも別に良いしさ。
分かってる。大丈夫、それくらいならあるし、カードも持ってるし」
どうやら、カナはわたしを電車に乗せて、目的地までちゃんと連れて行ってくれるつもりらしい。
「ありがと。じゃあ、何か使ったら、後で請求する」
ほどなくして、電話を切ると、カナはにっこり笑って、わたしを見た。