初デート~12年目の恋物語 番外編(1)~
エピローグ
月曜日のお昼休み。
すっかり、定着した、しーちゃんたちとのランチタイムに、カナが乗り込んできた。
「今日、一緒に食べていい?」
って、カナが言うと、みんな、「どーぞ、どーぞ」って大喜びで、席を作ってくれた。
……わたしたち、珍獣じゃないんだけど。
しーちゃんたちはともかく、校内では、わりと、そんな風に扱われている気がする。
ただでさえ、そんな視線が痛いのに、お弁当を食べながら、カナは言った。
「あのね。ハルのこと、あんまりからかわないで」
「ん? なに?」
しーちゃんが、不思議そうな顔で、カナのことを見た。
カナが、土曜日のことを話し出して、
3人ともが興味津々の様子で、耳を傾けた。
わたしが電車に乗ったことがなかったことを気にして……って、そんなことをカナが言い出す。
……やだ、カナ。
恥ずかしいよ。
そんな話、しないで。
って、カナの腕をツンツンと突いたけど、カナは無視。
けっきょく、電車の話だけじゃなくて、カナは亜矢ちゃん、梨乃ちゃんに聞かれるまま、土曜日のこと、ぜんぶ話してしまった。
話を最後まで聞いてから、しーちゃんは、ぼそりと言った。
「で、なに? のろけ?」
「え!? そうじゃなくて!」
だから、ハルのことからかうのやめてって……とか、
カナは慌てて言ったけど、
誰もそんなこと聞いてなくて、
しーちゃんも、梨乃ちゃんも、亜矢ちゃんも、にやにや笑って、
カナを……わたしたちを見ていた。
「叶太くん、過保護!!」
「いや、でも」
「いーよ、じゃあ、陽菜、今度は、わたしともデートしよ!」
ぜんぜん、脈絡なく飛び出したしーちゃんの言葉に、思わず、
「うん!」
って答えたら、カナが、驚いた顔をして、慌てて言った。
「それ!! 行くなら、オレも連れてって!!」
しーちゃんも、梨乃ちゃんも、亜矢ちゃんも、大笑いした。
わたしが「もう」って、赤くなってうつむくと、
カナが、小声で「ごめん」って言って、わたしの手をそっとにぎった。
それを見たしーちゃんたちが、また何か言って。
7月の空気は暖かくて、
とても幸せで、
恥ずかしいって思っていたはずが、
いつしか、わたしは、クスクス笑い出していた。