初デート~12年目の恋物語 番外編(1)~

どうしても、ひとりで乗ってみたかったのかというと、

そう、ひとりで乗ってみたかった。



みんながひとりで乗っている電車に、わたしだけ付添いが必要なんておかしいよね。

うちの学園に初等部から通う子の多くは電車通学だもの。

近所から来る子の方が少なくて、バス通学なんて近い方。



で、みんながみんな、毎日元気いっぱいなはずはない。

それでも、休まず登校してきてる。



だったら、わたしだって元気な日なら大丈夫だよね?



そう思ったんだ。

だけど、わたしは甘かったみたい。



まず、切符の買い方が分からない。

ようやく買って、ホームに上がると、今度は、どの電車に乗ればいいのか、分からない。



だって、線路が4本もあるんだもん。



さすがに、T市行きがどっちかは分かった。

でも、残り2本の内、どっちに乗れば目的地に行けるのかで戸惑い……。



初等部時代から電車通学している友人、しーちゃんの顔を思い浮かべて、自分の世間知らずに、うんざりした。



そうして、ようやく電車に乗った頃には、すっかり疲れきって、わたしのささやかな自立心も萎えかけていた。
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