ファインダー越しの恋
この一件に味をしめた俺は、何かと用事を見つけては福山のおっちゃんを訪ねて行った。


もともと、俺も弟も小さい頃からおっちゃんに世話になっていたので、たびたび遊びに行っても怪しまれたりはしないだろう。

毎回シズさんの姿を見れるとは限らなかったけれど、チラッとでもすれ違えるだけで俺は幸せだった。


ある日、ちょうどシズさんが裁縫の先生のところへでかけるところに出くわした俺は、こっそり後をつけていくことにした。

木の陰やら家の壁やらに隠れながら、道すがらシズさんの姿を遠めに眺めていったのだ。


今考えると、これは完全にストーカーだ。

でも、当時の俺には、これがシズさんに近づける唯一の方法だった。


こうやって遠目に眺めることしかできない、本当に手の届かない存在だったのだ。

そんなシズさんと、結婚なんて、当時の俺には夢のまた夢の話しだった。
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