ファインダー越しの恋
宿舎の夜はサソリとの戦いだった。

冬でもベッドには蚊帳をつって、サソリが天井から落ちてくるのを防ぐのだ。
仲間がサソリに刺されて死んだ話しをよく聞いたもんだった。


コオロギが異常発生してあたり一面を食い荒らしていったこともあった。

北支では、日本で経験できないような出来事がたくさん起きた。


ただ、毎日の事務仕事は苦痛でしょうがなかった。
一生こうやって我慢しながらイヤな仕事を続けるのかと思うと堪らなくなった。


今思えば、この時の決断が俺の一生で一番大きな分かれ道だったと思う。

このとき勇気を出して決心していなければ、その後の一生をずっとイヤな仕事で無駄に過ごしていただろう。

この時の決断は、その後の苦学や独学に耐えるための支えになった。


俺は、技術屋になろうと決断したのだ。
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