ファインダー越しの恋
「福山のおっちゃん!
持って来たでー!」

「おう。ご苦労だったな」


おっちゃんの声と一緒に、
またあの綺麗な子がゆっくりと出てきた。


歩き方まで上品じゃな~。


俺は思わずほうけてしまった。
彼女の周りの空気だけ色が違うようじゃ。

反物を抱えたまま見とれていると、
目の前に白い手がスッと近づいた。


「お疲れ様」


鈴のなるような声でそう言って、
俺が抱えていた反物を受け取る。


「あ、ああ。
重いから気をつけて」


彼女は軽く会釈して、すぐに奥に引っ込んでしまった。


もうちょっと話したかったのにな~。
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