キスしたくなる唇
恋日和

編集長命令

千秋Side
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「ええっ! わたしが路上アンケートに行くんですか?」

 出社した直後、編集長に呼ばれて指示された内容に唖然となる。

「これくらい簡単でしょう?」

 指示書を読むとその文字に目が点になり、何かの間違いじゃないかと目をこすってみる。

「こ、こんな内容の街頭アンケートだなんて……」

 わたしはがっくりと肩を落とす。

「4月の特集記事に使うのよ。よろしくね」

 アラフォーで未婚の編集長は、頬にかかるボブヘアの髪を耳に掛けながらそっけなく言う。

 20代から30代に人気のある月刊誌。ファッションもあれば、きわどいえっち特集などもあったり。

 入社して3年目のわたしはファッション部門の担当。

 今まで特に大きなミスをしたことがなかったのに、数日前締め切りギリギリの写真が入っているUSBを水たまりに落としてしまったのだ。

 もう一度、カメラマンのところへ頭を下げに行き、嫌味を言われながら写真をもらい、徹夜で編集作業をした。よって、編集長のお怒りをかい、普段はアルバイトがやる仕事をペナルティーとして指示されたのだ。

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