キスしたくなる唇
「あ、これはアンケートに必要な道具よ」

 大きな黒いトートバッグを渡される。

「必要なものは全部そこに入っているから。期限は4日よ。その間に男女100人ずつのアンケートを取りなさい。行っていいわ」

 わたしは編集長に頭を下げ、部屋を出た。

 
 自分の机に戻ると、トートバッグの中身をおそるおそる出してみる。

 企画が企画だけにどんなものが出てくるのか。

 特にフリップが気になる。まだ裏返しのままで何が書かれているのか。

「それどうしたの? あ、千秋はカフェオレで良かったよね?」

 取材から戻ってきた3年先輩の三井さんが、途中で買ってきたカフェオレをわたしに差出しながら聞いてくる。

「はいっ。ありがとうございます」

 近くのコーヒーショップのカフェオレは、やはり缶のものとは全然味が違う。

 一口飲むと温かさが胃に染みわたりホッとする。

 三井さんも自分用のブラックコーヒーを一口飲んでから、フリップを持ち上げる。

「なにこれ」



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