キスしたくなる唇
「あの仕事、いつまでなの?」

「路上アンケートのこと? あと3日」

「で、サクサク進んだの?」

「それがまだ35、あ! 怜央が答えてくれたから36人。ノルマはあと164人」

 アンケートのことを考えると、気が重くなる。

「手伝おうか? クラブに行けばすぐに終わると思うけど?」

「だ、だめだよ」

 嬉しかったけれど、怜央に迷惑をかけてしまいそうだ。

「どうして?」

 断わるわたしに首を傾げるようにして聞いてくる。

「そういうところでアンケートは取りたくないの」

「千秋さんは真面目なんだな」

 怜央は大きなハンバーガーを3つ食べきった。
 
 わたしはひとつを食べ終わったところ。

 お腹が空いているのに、怜央がすぐそばに居るせいで意識してしまい咀嚼するのにも時間がかかった。

 まったくどうしちゃったのよ。怜央に変な風に思われないうちに帰った方が良さそう。

「怜央、も――」

 もう帰ると言おうとしたとき、怜央の親指がわたしの唇に触れた。
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