キスしたくなる唇
「6番、6番……」

 6番って、怜央っ!?

「なに目を白黒させているのよ。6番は誰なの?」

 強引に指示書を奪われ、三井さんは文字を目で追う。

「今人気絶頂のモデル、怜央じゃない! さすがわたしの見る目は違うわ」

 自分の選んだ唇に満足そうだ。

「そんなに彼の唇がいいですか?」

「男だったら少し薄めの唇が好きなんだけど、怜央の少し厚みがある下唇は官能的じゃない? 薄笑いの怜央ってセクシーよね」

「そうでしょうか」

「怜央を気に入らないって、千秋は変わっているわね。10人中7人は彼のことがいいって言うはずよ」

 三井さんはありえないでしょうと、うっとり怜央の唇を見ている。

 今話題に出ている怜央は現在、都内の芸術大学で油絵を学ぶモデル。高校在学中に原宿でモデル事務所にスカウトされてから、あっという間に人気のトップモデルになった。

 そんな有名人の彼はわたしの実家の隣に住んでいた。厳密に言えば怜央はわたしのハトコ。従兄弟同士仲が良くて、隣に住んでいたからわたしと怜央は姉弟のように育ってきた。

 現在、わたしもそうだけど、怜央は実家を出て都内のマンションに一人暮らし。

 少しだけ血の繋がったハトコの怜央、小さい頃から可愛くて、しだいにカッコよく成長した。雑誌で見かけるたびに彼は極上のイケメンになって……姉のような感情はいつしか恋心を抱くようになっていた。5才も年下なのに。
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