その指先で、濡れる唇

甘美で被虐的な快感に体が痺れて動かない。

まるで魔法でもかけられたみたいに。

「いつもみんなに一生懸命で。すごく頑張っててさ」

じっと唇を見つめたまま、ちっとも私の目を見ようとしない木村さん。

ひょっとして彼もまた照れているとか?

「西尾さんが可愛すぎるから。だからずっと――」

切ない熱を帯びた木村さんの視線と、心もとなく揺れる私の視線。

ようやく交わるふたりの眼差し。

「ずっとずっと、こうしたかった」

瞬間、木村さんはいともあっさり私の唇を奪った。

その指ではなく、その唇で。

一瞬の心の隙を突かれたような、そんな気がした。

求めあって、与えあって、確かめあって。

深く口づけられるほど、全身がふるえるような快感に包まれた。

今日ここへ来て初めて交わしたキスとは違う。

激しくて、熱っぽくて、ちょっと淫猥。

無遠慮に求められるほど嬉しかった。

彼の心の核に触れることを許された気がして……。
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