その手に触れた恋
「毎週末ここにくるんですか?」

「ああ・・・職場も近いしね。」

「お仕事かぁ・・・私は学生なんで。」

「そうなの?なんか大人びているからOLさんかと思った」

へえ~そうなんだ。私って。

今日は結構気合を入れた格好でクラブデビューをしたんだっけな。

いつもはメガネなのに、カラコンを入れた。

髪だって念入りにトリートメントしてきたし・・・。みうちゃんのコーディネート案を身にまとってね。

「さっき。本当にありがとうございます。でもちょっと、恥ずかしい・・」

私は、彼の手を見つめてると、なんだか酔いのせいもあってか、うっとりしていた。

「ついつい・・・ごめん。見てられないんだよ。あーゆう下品なヤツら。

クラブじゃよくあるからホント気をつけないとね」

「・・・聞いてる?」彼は私の顔を覗き込んだ。

「ダメ。そんなに近づいちゃ・・・。」ドキドキしている私。

「こういうとこ慣れてる感じだなー。」話し方からそう感じていた。

優しくしてくれるけど、やっぱ危険なのかな?こういう出会いって。

私は、いつもの臆病癖がまたブレーキをかける。

「髪・・・長いね・・・」彼はどうやら、私の黒髪に目がいったようだ。

「ハイ。高校の時から、黒髪のロングが好きで伸ばしてたんですよねー。」

「そうなんだー。オレ、髪型はロングが好きなんだ。」

そう言いながら、私の髪を間近で見る彼。

「こんなに近くで見られたのは初めて」ちょっとした興奮。

男の鼻息が髪にフウっとかかる・・・イヤらしいな。これ・・・。

でも、内心、嬉しかった。

「うそ・・・私にも武器があったのね。」彼の視線を感じながら

私は心が弾んでいた。

「今度逢えたら、この髪・・・触ってもいいですよ。」

生まれて初めてに近い強気な発言。

正直、自分でもビックリだったけど。

「今日はお預けかぁ・・・」彼の甘えた声に

優越感が止まらない。

私たちはこうして

毎週末

このクラブで待ち合わせるようになった。

名前は ヒデ 25歳の会社員。

私にはちょっと大人な男

でも、私は夢中だったの。

自分も背伸びしたくって。

臆病なんていってられない・・・

夢に描く彼とヒデくんを重ねて

彼を好きになっていった。





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