触れてほしくて
触れてほしくて
「雨、強くなってきましたね」
雨に降られて、一時しのぎに駆け込んだビルの軒先。
待てば待つほど強くなる雨を見つめながら、彼がため息をつく。
「営業先からの帰りでよかったよね。行きだったら最悪」
顔をしかめてそう言うと、「確かに」と彼が肩を竦めて笑った。
私とふたつ下の後輩である彼は、ふだんチームを組んで営業をしている。
私たちはたった今、長い間難航していた商談をうまく纏めてきたところだった。
上司にいい報告ができると、意気揚々と取引先を出てきたのに、10分も歩かないうちに、まさかの雨に襲われた。
少し待っていればおさまるだろうと、適当なビルの軒先に駆け込んだものの、雨は一向にやむ気配がない。
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