触れてほしくて


私は大学に入学してすぐの頃からその男友達に片想いをしていた。

彼は私のことを気の合う女友達としか思っていなくて、私に対する扱いは他の女の子に比べて随分と軽かった。

恋愛相談だって普通にしてくるし、飲み会の席では私を気遣うことなくガンガンビールを勧めてくるし。初めからずっと、女として彼に意識されていなかった。

完全な、完璧な片想いだった。

男友達が好きになったり、彼女にするのは、決まって清楚で女の子らしい、髪の長い女の子だった。

飲み会の席で酔っ払った男友達が、「彼女の長い髪を撫でるのが好き」と言っているのを聞いて、私も髪を伸ばした。

一度でいいから、彼に触ってもらいたかった。

いつか、もしかしたらそういうときがあるかもと期待してた。


でも……

ずっと思い続けてきた男友達は、半年後に結婚するらしい。


< 4 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop