触れてほしくて
「やっぱり、男の人は長い髪のほうがいいのかな」
なくなってしまった髪を惜しむように首の後ろを触っていると、頭の上にぽすっと何かが載っかった。
不思議に思って顔をあげると、いつの間にか後輩の彼が私の顔を覗き込んでいた。
「俺は短いの好きですよ」
彼の言葉に、ほんの一瞬だけときめく。
彼は私の短い髪を乱暴にわしゃわしゃと撫でると歯を覗かせて笑った。
「先輩、長いのも良かったけど短いのも似合ってますよ。トイプードルみたいで」
「え……」
トイプードルって。
私、犬っぽく見えてるの――…?
ずっとずっと大切に伸ばしてきた髪を、ものすごい覚悟で短く切ったのに。
彼の無神経な発言に、ときめく気持ちが一気に冷めた。