触れてほしくて
「このまま待っててもしょうがないし。私、先のコンビニ行って傘買ってこようかな」
少し不機嫌な声を出しながら、ビルの軒先から身を乗り出す。
「待って。今出て行ったら、傘を手に入れても意味ないくらいにずぶ濡れになりますよ?」
雨の中に出て行こうとする私を彼の手が引き止めた。
後ろから手首を引かれたかと思うと、背中からふわりと抱きしめられるみたいに彼の腕につかまる。
「もうちょっと、一緒に雨宿りしません?」
息を吐くように顔のそばでささやかれて、耳朶が熱くなる。
「ちょっと、ふざけないでよ」
彼の腕から逃れて振り返る。
不覚にも熱くなる頬を意識しながら顔をあげると、彼がクスリと笑って私の頭に手を載せた。