闇に響く籠の歌

「圭介、きいてたの？　三のつく日じゃない。だから、ネットじゃ今日も何かあるんじゃないかって大騒ぎなの。二度あることは三度あるっていうし」

「それって、お前が入り浸っているオカルトサイトだけだろうが。俺、そんな話きいたことないし。第一、その話だって一種の都市伝説だろうが。マジできいて、逆に疲れた。俺、寝るから」


そう言うなり、圭介は話を終わらせようというように机に突っ伏している。そんな彼を横目で見ながら、奥寺は携帯を弄っていた。その時、その奥寺が素っ頓狂な声を出している。


「おい、篠塚。これって、伊藤のことじゃね？」

「ん、何？　俺、眠いの。さっきから寝るって言ってるじゃないか」

「それどころじゃないって。これ見てみろって」


そう言うなり、奥寺は圭介に携帯の画面を突き付けている。そこに表示されているのは携帯でも手軽に閲覧できるニュースサイト。その冒頭に『中年男性の不審死体発見』という見出しが大きく踊っているのだった。


「な、どうしてこれが伊藤だっていうんだ？　名前も何もないじゃないか」

「悪い、悪い。ちょっと待ってろ」


そう言うなり、奥寺は慣れた手つきで本文を開けていく。そこに現れた文面に素早く目を落とした圭介は思わずうなり声を上げることしかできなかった。


「ほんとだ……これ、多分、伊藤だ。年齢も体格も合致してる」

「だろう？　おまけにこのビルって学校の近くの雑居ビルだろう？　昼間でも薄暗くってお化けが出るんじゃないかっていう曰くつきのヤツ」

「だよな。なんで、あんなところに伊藤が行ったのかは分からんけど、でも、これって本当なのか？　まさか、これでウソでした、はないだろうけど」


男二人が頭を突き付けてボソボソ話している。その様子に、遥と茜は不思議そうな顔をする。その頃には、奥寺の叫び声に反応した他のクラスメートたちもざわつきを隠せないようだった。


「おい、これ見てみろよ」

「え、マジで？　伊藤って名前、珍しくないぞ」

「でもさ、小太りの中年。画像見たらハゲてるぞ。これって伊藤じゃないか」

「え？　伊藤先生、どうかしたの？」

「ほら、これ見てみろ。そこの雑居ビルの入り口に倒れてたんだと」

「うそ〜　じゃあ、今日、自習だっていうのはこのせいなの？」