闇に響く籠の歌
第2章
奥寺がその存在に気がついたニュース。それはあっという間に生徒たちの口から口へと飛び火している。なんといっても、伊藤という教師の評判が生徒の間では半端なく悪かったからだ。

しかし、その日が終わろうとしても学校では、伊藤が殺されたのかどうかということをしることはできなかった。

これは非常に居心地が悪い。なにしろ、圭介たちはこれが真実だと思っている。だとすれば、当然、全校集会かそれに準ずるものが開かれると思っていたのだ。

しかし、いつまでたってもそのようなものが開催される気配はない。そのことで、彼らが苛立ちだけを覚えていた。


そして、放課後——


思ったような情報が手に入らないことがストレスとなったのだろう。遥は圭介を引っ張るように、伊藤らしき男の死体が発見された雑居ビルへと足を向けていた。


「遥、こんなことお前の親父さんにばれたらどうするんだ」

「大丈夫よ。圭介さえ何も言わなかったらお父さんが分かるはずないじゃない」

「そうは言ってもな……おじさんの勘って異常にいいじゃないか。気にならない方がおかしい」

「圭介は気にしなくてもいいの。さ、それよりも見えてきたわよ。特に人がいるわけじゃないんだ。何か聞けると思ったのにな」


雑居ビルの入り口には人影もみえない。そのことが悔しいのか、遥は唇を噛みしめている。

一方、圭介はというと、そのことに胸をなでおろしている。そして、さっさと帰ろうというように、遥の袖を引っ張っていた。


「ちょっと、圭介。何するのよ。制服の袖が伸びるでしょう?」


いや、別にジャージー生地じゃないから伸びるはずないって。そんなことを思っている圭介は遠慮なく彼女の袖を引く。


「圭介、何するのよ。そんなに袖を引っ張らなくてもいいじゃない」

「何って簡単じゃないか。こんなとこで油売ってないで、さっさと帰ろうってこと。遥は誰かがいるかもって思ってたんだろうけど、誰もいないじゃないか」

「これっておかしいわよ。だって、絶対に連続殺人よ。だったら、捜査の人がいるはずだわ」

「そんなバカなこと思っているのは、オカルトマニアの遥だけ。違う? それに、もし警察の見解がそれなら、遥の親父さんに聞いた方が正確だって」

「う……そ、それはそうだけど……でも、お父さん、仕事のことは教えてくれないもの」

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