闇に響く籠の歌
分かりきったことを言うな、と告げるような川本の調子。そんな彼の様子を水瀬はビクビクしながら見つめている。そんな中、穏やかな調子の声だけが響いていた。
「では、この話ではかごめの歌はこういう風に表記するということ、理解してくださいね」
そう言いながら、柏木は手元にあったメモにペンを滑らせている。そのペン先から生まれてくる文字列から圭介たちは目を離すことができなくなっていた。
『籠女 籠女
籠の中の鳥は いついつ出やる
夜明けの晩に 鶴と亀が滑った
後ろの正面 誰だ』
子供の頃から何度も歌って遊んだ曲。それをこうやって漢字交じりの文字列で見ると別の印象がある。そう思った圭介はじっと柏木の顔を見ることしかできない。
そんな彼の視線を感じたのだろう。柏木はニッコリと笑いながらペンでカウンターをトントンと叩いていた。
「やっぱり、こうやって漢字交じりの文章になると印象が変わる?」
「あ、はい……なんか、知っているのとは別の歌みたいな感じがしますね」
「ほんと。なんか怖いっていう感じがする」
圭介の言葉に、遥も素直な感想をもらしている。高校生二人のそんな姿を見た柏木は、川本たちの反応をみるようにしながら、改めて口を開いていた。
「何度も言っていますが、この『籠女』というのは妊娠した女のことです。分かっていただけますか?」
「だから、どうしてそうなる」
「妊娠すると、腹が大きくなるでしょう。それが腹に籠をつけたように見えるからですよ」
さらりとそう告げた柏木は『続けてもいいですか?』というような視線を向ける。それに対して鷹揚に首を縦に振る川本の姿。そんな彼の姿に軽く頷いた柏木は次の文節へとペン先を動かしていた。
「で、次の籠の中の鳥。これは籠が妊婦の腹だっていうことを考えればすぐにわかるよね?」
「うん。赤ちゃんのことよね?」
「そう。遥ちゃん、正解。で、続きの言葉は当然、それに繋がってくる」
「だろうな。いついつ出やる。なんて、産まれてくるっていうことだろうな」
「圭介にしたら冴えてるじゃない。っていうより、やっぱり、興味あるんじゃない」
「お前と一緒にするな」
遥が茶化してくることにムスッとした表情で圭介が応えている。このままでは話がストップしてしまう。そう思ったのだろう。柏木がスッと横から話を取っている。
「では、この話ではかごめの歌はこういう風に表記するということ、理解してくださいね」
そう言いながら、柏木は手元にあったメモにペンを滑らせている。そのペン先から生まれてくる文字列から圭介たちは目を離すことができなくなっていた。
『籠女 籠女
籠の中の鳥は いついつ出やる
夜明けの晩に 鶴と亀が滑った
後ろの正面 誰だ』
子供の頃から何度も歌って遊んだ曲。それをこうやって漢字交じりの文字列で見ると別の印象がある。そう思った圭介はじっと柏木の顔を見ることしかできない。
そんな彼の視線を感じたのだろう。柏木はニッコリと笑いながらペンでカウンターをトントンと叩いていた。
「やっぱり、こうやって漢字交じりの文章になると印象が変わる?」
「あ、はい……なんか、知っているのとは別の歌みたいな感じがしますね」
「ほんと。なんか怖いっていう感じがする」
圭介の言葉に、遥も素直な感想をもらしている。高校生二人のそんな姿を見た柏木は、川本たちの反応をみるようにしながら、改めて口を開いていた。
「何度も言っていますが、この『籠女』というのは妊娠した女のことです。分かっていただけますか?」
「だから、どうしてそうなる」
「妊娠すると、腹が大きくなるでしょう。それが腹に籠をつけたように見えるからですよ」
さらりとそう告げた柏木は『続けてもいいですか?』というような視線を向ける。それに対して鷹揚に首を縦に振る川本の姿。そんな彼の姿に軽く頷いた柏木は次の文節へとペン先を動かしていた。
「で、次の籠の中の鳥。これは籠が妊婦の腹だっていうことを考えればすぐにわかるよね?」
「うん。赤ちゃんのことよね?」
「そう。遥ちゃん、正解。で、続きの言葉は当然、それに繋がってくる」
「だろうな。いついつ出やる。なんて、産まれてくるっていうことだろうな」
「圭介にしたら冴えてるじゃない。っていうより、やっぱり、興味あるんじゃない」
「お前と一緒にするな」
遥が茶化してくることにムスッとした表情で圭介が応えている。このままでは話がストップしてしまう。そう思ったのだろう。柏木がスッと横から話を取っている。