闇に響く籠の歌
「そうだったな。話の腰を折って悪かった。続けてくれ」
そう言うと、川本は胸ポケットからタバコを取り出す。カチカチっというライターの音が響き、紫煙が立ちこめる。
それを大きく吸った彼は『悪い』と言いながらも、タバコを消す様子は見せようともしていない。そんな彼の様子に呆れた表情を見せながら、柏木は話を続けるしかないと思っているようだった。
「遥ちゃんがタバコを嫌がっているようなんですがね」
「ガキの好みに合わせられるか。こっちにしたら辛気臭い話、聞かされてるんだ。これくらいのことは大目に見ろって。それとも、ここは禁煙席だったか?」
「親父さん、その言い方はないでしょう。遥ちゃん、タバコは苦手かな?」
「ちょ、ちょっと……でも、辛抱できないほどじゃないですし……話、続けてくれていいですよ。続き、気になるし」
そう言いながらも遥の顔は半分涙目になっている。この調子ではタバコの煙が苦手なのは間違いない。そう思った柏木は、話を早く終わらせた方がいいだろうと考えたようだった。
「川本さんがここまでタバコを辛抱してくれたのは感謝しますけど、もうちょっと待って欲しかったですよね」
「そうか? とにかく続き、聞かせろ」
どこか上から目線の川本の声に、柏木はやれやれというように肩をすくめている。それでも、ここまで話して止めるということもできない。そのことを知っているだけに彼は言葉を選ぶようにしながら話を再開していた。
「鶴と亀が滑ったということは、よくないことが起きたと思って間違いないでしょう。おめでたい鶴と亀が滑る。それが妊婦とお腹の子供に不幸が起きたと思って間違いないでしょう」
「滑るっていうのはあんまりいい意味じゃないからな。あ、お前ら高3だな。滑るっていう言葉は嫌だったか?」
「そこまで神経質になりませんよ。それに、まだ受験シーズンじゃないです」
ムスッとした顔で圭介が応えている。それに対して川本はタバコの煙を思いっきり吐くと、楽しそうに笑っていた。
「だな。からかって悪かった。で、柏木。最後の意味は何だっていうんだ」
「後ろの正面っていう言葉は分かりにくいですよね。意味不明だと言われても当然ですよね」
「うん。後ろは後ろだもの。どうして、それの正面なの?」
そう言うと、川本は胸ポケットからタバコを取り出す。カチカチっというライターの音が響き、紫煙が立ちこめる。
それを大きく吸った彼は『悪い』と言いながらも、タバコを消す様子は見せようともしていない。そんな彼の様子に呆れた表情を見せながら、柏木は話を続けるしかないと思っているようだった。
「遥ちゃんがタバコを嫌がっているようなんですがね」
「ガキの好みに合わせられるか。こっちにしたら辛気臭い話、聞かされてるんだ。これくらいのことは大目に見ろって。それとも、ここは禁煙席だったか?」
「親父さん、その言い方はないでしょう。遥ちゃん、タバコは苦手かな?」
「ちょ、ちょっと……でも、辛抱できないほどじゃないですし……話、続けてくれていいですよ。続き、気になるし」
そう言いながらも遥の顔は半分涙目になっている。この調子ではタバコの煙が苦手なのは間違いない。そう思った柏木は、話を早く終わらせた方がいいだろうと考えたようだった。
「川本さんがここまでタバコを辛抱してくれたのは感謝しますけど、もうちょっと待って欲しかったですよね」
「そうか? とにかく続き、聞かせろ」
どこか上から目線の川本の声に、柏木はやれやれというように肩をすくめている。それでも、ここまで話して止めるということもできない。そのことを知っているだけに彼は言葉を選ぶようにしながら話を再開していた。
「鶴と亀が滑ったということは、よくないことが起きたと思って間違いないでしょう。おめでたい鶴と亀が滑る。それが妊婦とお腹の子供に不幸が起きたと思って間違いないでしょう」
「滑るっていうのはあんまりいい意味じゃないからな。あ、お前ら高3だな。滑るっていう言葉は嫌だったか?」
「そこまで神経質になりませんよ。それに、まだ受験シーズンじゃないです」
ムスッとした顔で圭介が応えている。それに対して川本はタバコの煙を思いっきり吐くと、楽しそうに笑っていた。
「だな。からかって悪かった。で、柏木。最後の意味は何だっていうんだ」
「後ろの正面っていう言葉は分かりにくいですよね。意味不明だと言われても当然ですよね」
「うん。後ろは後ろだもの。どうして、それの正面なの?」